藤井経営の藤井武です。
これまで日本の医療費総額や薬剤料に関してお話をしてきました。
今日はその中でも認知症に関して、少しトピックスを・・・。
超高齢化社会の進展に伴い、認知症患者は増加の一途を辿っています。
厚生労働省によると、認知症を有する高齢者人口の推移は、2010年時点では200万人程度ですが、すでに65歳以上人口の10%、242万人程度に達しているという意見もあるようです。さらなる高齢者人口の急増により、認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加すると言われています。
では、認知症になってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか?ただ病状が進むのを見ていることしかできないのか。当然、認知症にならないために日常生活を見直すことで予防につながったり、早期発見につながる画像診断技術も進展していますが、病気が発症した場合、頼ることになるのはやはり薬剤(新薬)になると思います。
しかし、最も開発が進んでいるとみられていたアメリカ製薬メーカーのイーライ・リリーが昨年末に開発中止を発表したそうです。
現在認知症薬と言うと、エーザイ社の「アリセプト」が有名ですが、これを含めて4つしかありません。
認知症薬の開発は、がんをもしのぐ至難の業で、病気のメカニズムを解明するのが難しい点が実用化につながらない様です。
認知症の新薬が開発され、発症を5年遅らせることができると、2050年までに世界中の患者は4割減り、医療費も年3,000億ドル(約33兆円)超を削減できるとの試算があり、世界的規模の医療費削減に対して、すさまじい効果が発揮される見通しです。
それだけに、開発に成功した製薬メーカーが獲得する利潤は、推して知るべし。
エーザイ、塩野義製薬、中外製薬、スイス・ロシュ社等著名な製薬メーカーを新薬開発のしのぎを削っています。
人類にとって超難敵な認知症に対する特効薬が開発され、健康余命が延びQOLの向上がもたらされると、それに伴い医療費負担が急増することも合わせて考えなければなりません。
給付と負担の問題、これバランスをどのようにとっていくのか、日本の医療政策と医療財政の今後の方針から、目を離せません。
来年の診療報酬・介護報酬同時改定に向けて、これから迎える夏を超えるといろいろな話が聞こえてくるでしょう。
これからも最新の情報を的確にとらえ、今後の医療提供体制にどのような影響が及ぼされるのか、検討していきたいと思っています。