上毛労務 薗田直子です。
『良知』という言葉がある。
陽明学の思想で、「人が生まれながらにしてもっている善悪の判断基準」という意味をもつ。
困っている人を助ければ自分自身も温かい気持ちになるし、逆に困っている人に気が付きながら何もできずに見過ごせばどこか後ろめたい気持ちになる。
誰かに教えてもらって生まれる感情ではなく、生まれながらに備わっている善悪を判断する「心」、これが『良知』だ。
誰しも生まれながらに備え持っている「良知」も、大人になるにつれ、周囲に影響されたり、損得を判断したりする過程で、その判断基準もぶれていくという。
日大アメフト部で反則行為を犯した選手が「監督やコーチからプレッシャーがあったにしろ、少し考えれば自分がやったことが間違っていると前もって判断できたと思う。そうやって意識を持つことが大事だと思った」「自分の弱さだと思う」と会見で語った。
彼の罪すべてを帳消しにすることはできないが、良知にもとづいた会見は、心にすっと入り込んできた。
一方、監督やコーチ陣の会見はどうだろうか。
アメフト日本一を目指すことを盾に、選手やコーチ陣は自分の良知に蓋をしていたようにもみえる。
立場や損得で物事を考えるのはなく、自然と湧いてくる「善いとする感情」が良知だ。
とはいえ、立場を考え動かなければならない実社会で、良知を行動に移すのは結構難しいことでもある。
自分の「良知」に耳を傾ける。世智辛い時代だからこそ見失わずにありたい。