「急ぎません。便」と「注文をまちがえる料理店」

上毛労務 薗田直子です。

ファッション通販サイト「ロコンド」が、今月から新たな配送方法として「急ぎません。便」を導入した。発送料は通常配送の「翌日お届け便」より100円安く、発送期間は1~3日かかる。顧客にとって「早く」はうれしいが、誰しもがそれを求めていないのでは?と始めたサービスだ。サービス開始初日から2割の顧客が「急ぎません。便」を選んだ。

「注文をまちがえる料理店」は都内に期間限定でオープンしたレストランだ。認知症を抱える人たちがホールスタッフとして働いている。
注文をとりに来たのに何をしに来たのか忘れ、客と同じテーブルに座ることも、名前の通り注文を間違えることも大いにアリ。実際には客がサポートしないと進まない場面も多く、客も参加者となり認知症のスタッフとのコミュニケーションを楽しんでいるという。
「社会が寛容になれば、認知症の人が普通に暮らすことができる。間違っても『ま、いいか』と言える、言われる環境が場をふわっと温かいものにする」という発案者の考えのもと生まれた。

この2つのニュースを、偶然同じ日に知った。

10年前に比べ、「当たり前」に求められる水準がどんどん高くなっている。サービスや商品はより高い質を、より正確に、よりスピーディーに・・・一方で、一ミリの後退さえ許さない完全防備な状況に息苦しさを感じることもある。社会問題になった宅配業者の過酷な労働環境は、「早く」「安く」を供給体制と利益度外視で拡大し、長時間労働や更なる求人難につながった結果だ。今や宅配産業自体がパンク寸前だ。

価値観が多様化し、すべての顧客に対し満足してもらうには、サービスや商品へ求める範囲はどんどん広がり高まるばかりだ。
でも、誰しもが全てに対して求めているのか?
誰かに極端な負担を強いてまで、早く、確実に、安くを求めていないのではないだろうか。
企業が過剰な競争しているだけの部分もあるように思う。

「注文をまちがえる料理店」には、料理そのものより、わくわくとふわっとした人との関わりを求めているのだろう。

アレもコレもではなく、「何を」価値として提供するのか。(先週に引き続いて・・・)
価値をハッキリ絞ることで、キラリと輝く企業や活躍する人も増えてくるだろう。

価値を、顧客が選ぶ時代になったということだ。