医療費について 2 高額薬の費用対効果

藤井経営の藤井武です。

今日は別のテーマでブログを、と思っていたのですが、日経新聞の朝刊をみたところ医療費の中の薬剤料に関する記事が目に入り、興味がこちらに向いてしまい・・・色々と思うことが多いので、このテーマにしました。

前回のブログで、2015年度の医療費に占める調剤の割合が、19.0%と約2割になっており、かつ前年比対比の伸び率で、調剤が9.4%伸びており効果の高い新薬の保険適用による影響がある旨記載しました。
そこで、医療費に占める調剤の伸びを抑制する方策として、平成29年6月14日に厚生労働省は、公的な医療保険から支払う薬剤費を適正化するため、薬の費用対効果についての大規模な国民調査をするようです。
この国民調査への期待としては、一般の人が「このくらいまでなら保険で支払うべきだ」という相場観を探りたいようで、非常に高価な薬剤が治療効果に見合っていない場合は、薬価引き下げ(値下げ)をするための理由にするようです。
調査内容の例として「1年間延命できる医薬品の価格がX円の場合、公的保険から医療費を支払うべきか」、「はい」の場合何%の人がX円なら払うか、を調べ、さらにその費用対効果を5段階(とても良い・良い・受け入れ可能・悪い・とても悪い)で判定する、という立て付けの様です。
どのような結果が出るにしても、国民は全ての人が医療費や薬剤に精通しているわけではないので、結果については当然専門家の意見を聴く必要があり、それをもって最終的な判断はされるべき、と思います。
紙面の中で、東大大学院特任准教授・五十嵐中氏のコメントが紹介されていました。
この中で以下の言葉について、深く考えさせられました。
「余命10年の人を1年延命させるのと、末期に近い人を1年延命させるのでは同じ条件で1年延命させるといっても意味合いが異なる。」
上記の様なことも勘案した総合的な判断が重要であると、五十嵐中氏は締めくくっています。
また、新薬開発をする製薬メーカーは、多大な経営上のリスクを抱えながら新薬開発費を投じているわけで、過度な薬価引き下げにつながるようなルール変更が続くと、人類にとって本当に必要で効果がある新薬開発を停滞させることもあり得ると思います。
新薬を必要とする人が安定的に使用できるように供給が滞ることはさけるべきで、その費用負担についてはある程度の自己負担は覚悟のうえで、柔軟に対応できる医療制度の構築が求められている、と切に感じます。