blog
FCMG
FCMG BLOG
2017.06.29
カテゴリ : 医業

藤井経営の藤井武です。

これまで増え続ける医療費に対し、給付と負担、に着眼した話をしてきました。
新薬開発やあらたな医療技術の革新により、より便益の高い医療提供が受けられる一方で、診療報酬や調剤報酬といった医療費は増加の一途を辿っており、歯止めがかからない状況です。

この増え続ける医療費対策として、以前から検討されていた事項が始まる様です。

2018年度から国保の運営主体が市町村から都道府県に移管されることに伴い、逼迫している国保財政支援のため1,700億円を配布することが決していたが、このうち約550億円分は2019年度以降、各都道府県の医療費削減の成果に応じて分配する、という方針の様です。

今後日本の人口は減少していくとともに、人口構成も変わります。そのため、これまで、と、これから、の医療需要には変化が生じます。それを数値で具体化したのが地域医療構想における2025年の医療機能別(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)必要病床数です。ちなみに我が群馬県は、高度急性期+620床、急性期+4,906床、回復期-4,040床、慢性期+1,134床、合計+2,620床という推計値となっており、全国的な傾向ではありますが、急性期病床機能が過剰で慢性期機能が不足しており、合計では病床が過剰となる、という予測になっています。
全国都道府県の現状の病床構成をみても、非常にユニークな傾向が表れています。(西日本の病床過剰傾向等)
発表当時、大きな反響があったことを思い出します。
当然、医療費においても非常に大きな差が見られます。1人当たり医療費が2倍近い都道府県もあります。
確かに、各地域における慣習や生活習慣等には差があり、そのため各疾病の受療率(病気の発症割合)には差があるのはわかりますが、逆を返せば受療率が高い疾病も特定できる、と言うことにもなります。

話を戻しますが、上記のような各都道府県の医療費のばらつき是正のためにも、国は各都道府県の医療費削減の成果に応じてインセンティブを付与することにしました。これにより、各都道府県の疾病予防への取組が加速しますし、医療提供の在り方も、大きく変わっていくと思います。
各都道府県は地域医療構想等を作成し実行することで、自分たちの今後の医療需要とそれに対応した適切な医療提供体制構築を実現していかなくてはなりません。国から都道府県へ、今後さらなる権限の委譲が進むとともに責任も負わなければならなくなるでしょう。

現在は全国一律1点10円の診療報酬も今後は各都道府県により異なる場合がある、ことも想定しておく必要もあると思います。

2017.06.22
カテゴリ : 医業

藤井経営の藤井武です。

これまで日本の医療費総額や薬剤料に関してお話をしてきました。
今日はその中でも認知症に関して、少しトピックスを・・・。

超高齢化社会の進展に伴い、認知症患者は増加の一途を辿っています。
厚生労働省によると、認知症を有する高齢者人口の推移は、2010年時点では200万人程度ですが、すでに65歳以上人口の10%、242万人程度に達しているという意見もあるようです。さらなる高齢者人口の急増により、認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加すると言われています。

では、認知症になってしまった場合、どうしたらよいのでしょうか?ただ病状が進むのを見ていることしかできないのか。当然、認知症にならないために日常生活を見直すことで予防につながったり、早期発見につながる画像診断技術も進展していますが、病気が発症した場合、頼ることになるのはやはり薬剤(新薬)になると思います。

しかし、最も開発が進んでいるとみられていたアメリカ製薬メーカーのイーライ・リリーが昨年末に開発中止を発表したそうです。
現在認知症薬と言うと、エーザイ社の「アリセプト」が有名ですが、これを含めて4つしかありません。
認知症薬の開発は、がんをもしのぐ至難の業で、病気のメカニズムを解明するのが難しい点が実用化につながらない様です。

認知症の新薬が開発され、発症を5年遅らせることができると、2050年までに世界中の患者は4割減り、医療費も年3,000億ドル(約33兆円)超を削減できるとの試算があり、世界的規模の医療費削減に対して、すさまじい効果が発揮される見通しです。
それだけに、開発に成功した製薬メーカーが獲得する利潤は、推して知るべし。
エーザイ、塩野義製薬、中外製薬、スイス・ロシュ社等著名な製薬メーカーを新薬開発のしのぎを削っています。

人類にとって超難敵な認知症に対する特効薬が開発され、健康余命が延びQOLの向上がもたらされると、それに伴い医療費負担が急増することも合わせて考えなければなりません。
給付と負担の問題、これバランスをどのようにとっていくのか、日本の医療政策と医療財政の今後の方針から、目を離せません。
来年の診療報酬・介護報酬同時改定に向けて、これから迎える夏を超えるといろいろな話が聞こえてくるでしょう。
これからも最新の情報を的確にとらえ、今後の医療提供体制にどのような影響が及ぼされるのか、検討していきたいと思っています。

2017.06.15
カテゴリ : 医業

藤井経営の藤井武です。

今日は別のテーマでブログを、と思っていたのですが、日経新聞の朝刊をみたところ医療費の中の薬剤料に関する記事が目に入り、興味がこちらに向いてしまい・・・色々と思うことが多いので、このテーマにしました。

前回のブログで、2015年度の医療費に占める調剤の割合が、19.0%と約2割になっており、かつ前年比対比の伸び率で、調剤が9.4%伸びており効果の高い新薬の保険適用による影響がある旨記載しました。
そこで、医療費に占める調剤の伸びを抑制する方策として、平成29年6月14日に厚生労働省は、公的な医療保険から支払う薬剤費を適正化するため、薬の費用対効果についての大規模な国民調査をするようです。
この国民調査への期待としては、一般の人が「このくらいまでなら保険で支払うべきだ」という相場観を探りたいようで、非常に高価な薬剤が治療効果に見合っていない場合は、薬価引き下げ(値下げ)をするための理由にするようです。
調査内容の例として「1年間延命できる医薬品の価格がX円の場合、公的保険から医療費を支払うべきか」、「はい」の場合何%の人がX円なら払うか、を調べ、さらにその費用対効果を5段階(とても良い・良い・受け入れ可能・悪い・とても悪い)で判定する、という立て付けの様です。
どのような結果が出るにしても、国民は全ての人が医療費や薬剤に精通しているわけではないので、結果については当然専門家の意見を聴く必要があり、それをもって最終的な判断はされるべき、と思います。
紙面の中で、東大大学院特任准教授・五十嵐中氏のコメントが紹介されていました。
この中で以下の言葉について、深く考えさせられました。
「余命10年の人を1年延命させるのと、末期に近い人を1年延命させるのでは同じ条件で1年延命させるといっても意味合いが異なる。」
上記の様なことも勘案した総合的な判断が重要であると、五十嵐中氏は締めくくっています。
また、新薬開発をする製薬メーカーは、多大な経営上のリスクを抱えながら新薬開発費を投じているわけで、過度な薬価引き下げにつながるようなルール変更が続くと、人類にとって本当に必要で効果がある新薬開発を停滞させることもあり得ると思います。
新薬を必要とする人が安定的に使用できるように供給が滞ることはさけるべきで、その費用負担についてはある程度の自己負担は覚悟のうえで、柔軟に対応できる医療制度の構築が求められている、と切に感じます。

2017.06.08
カテゴリ : 医業

藤井経営の藤井武です。

今回は医療費のお話です。

昨年9月に2015年度医療費の動向について発表があり、総額約41.5兆円ほどとのことです。前年度から、約1.5兆円の増加となってり、2010年度以来5年ぶりに、伸び率が3%を上回ったことで、非常にインパクトのある内容でした。
医療費の構成比をみると、入院が16.4兆円(39.5%)、入院外(外来)が14.2兆円(34.3%)、調剤が7.9兆円(19.0%)、歯科が2.8兆円(6.8%)となっています。
また、前年度からの伸び率では、調剤が9.4%で、他の分野と比べても(入院1.9%、入院外3.3%)非常に大きなものでした。調剤の伸びの一因としては、C型肝炎等の治療薬である抗ウィルス薬等の薬剤料の増加による、と言われています。

最新薬剤の話題と言うと、がん免疫治療薬の“オプジーボ”がありました。当初、対象となる範囲が非常に狭く、そのため超高額薬剤だったのですが、対象範囲の拡大に伴い、医療保険財政への影響が極めて大きいことから、緊急的に対応を講ずる、とのことから、本来の診療(薬価)報酬改定時期の2018年4月を待たずに、2017年2月1日に50%引き下げることとなりました。

今まで“不治の病”と言われていた病気が、製薬メーカーの研究開発や医療技術の革新により、完治が見込める時代になっています。莫大な研究資金を投下する企業としては、営利を目的とするのは当然なわけで、投下資金の回収を目指します。利益追求が果たせなくなれば、企業の試験研究意欲をそぐことになるでしょう。
このような技術革新があってこその、不覚のうちに忍び寄る病魔から日々の生活を守ることができています。

医療費について先月5月末、3日間にわたり日経新聞の朝刊の1面で取り上げられていました。医療行政から尾辻議員、医療現場から日本医師会横倉会長、製薬メーカーから大日本住友製薬多田社長、それぞれの立場からご見識をお話ししていました。

医療費の“給付と負担”の問題は、これ以上先延ばしにはできない、国民生活を最も左右する問題であると思います。
命を守るためにどの程度の負担をするのか、給付はここまでよいので負担もここまでにする、など医療費には限度があることを前提にし、今まで以上の自己責任を覚悟した国民全員の意識改革をしない限り、日本の医療制度である国民皆保険制度の維持は、相当難しいことだと思います。

2017.06.01
カテゴリ : 医業

藤井経営の藤井武です。

今日はまさに、梅雨の走り、と言った空模様で、どんよりと重たい印象です。
毎月思うのですが、1ヶ月の始まりとなる初日の天気くらいは晴天で、気分よく新たなスタートを切りたいものです。

前回に引き続き、医療法改正の話です。
今回の医療法改正は、第1弾平成28年9月1日、第2弾平成29年4月2日と施行が2段階になりますが、第2弾の改正項目の医療法人の外部監査の義務付等の中で、関係事業者(医療法人の役員・近親者(配偶者又は二親等内の親族)やその支配する法人(社員総会等の議決権の過半数を占めている法人))との取引に関して新たなルールが設けられました。
概要は、一定の取引規模(事業収益や事業費用が1,000万円以上かつ総事業収益又は総事業費用の10%以上を占める取引等いくつかの基準があります)を有する関係法人がある場合、今まで決算終了後に提出する決算届(事業報告書等、監査報告書)に“関係事業者との取引状況に関する報告”が追加されています。
これにより、医療法人の役員と関係性の深いMS法人との取引内容や理事長や理事個人との地代家賃等の支払い状況を報告することになる場合があります。

やはり、所轄する行政としても、前回ふれた“医療は非営利”を担保するためには、実際の医療法人の運営上における健全性を証明しなけばならないためと思います。
当然今までも健全性のある法人運営はされていますが、これからは報告事項の1つに追加される場合がありますので、医療法人と関係事業者間取引を行う場合は、その算定根拠や他の取引事例と比較した場合の取引契約・金額の妥当性については、より慎重に検討した上で契約を結ぶ必要があります。
また、以前は特別代理人選任申請を行い、第3者による公平な視点から法人関係者との取引の妥当性を判断しましたが、昨年9月以降の新医療法施行後はこの規定は削除され、こうした契約行為の妥当性について、理事の忠実義務(医法46の7の2①)や競業及び利益相反取引の制限(医法46の6の4)によって、理事会を開催して議決することになっています。

こうした医療法改正の流れを見ても、医療法人運営にあたっては、より一層の透明性の確保と医療法人としての様々な議決事項におけるガバナンスの確保が明確に求められていることが理解できます。

株式会社藤井経営
Copyright(C) Fujii Keiei Inc. All Rights Reserved.